経糸をそっと「からめ」、緯糸を抱きとめる。
透け感と凛とした張り・・・自然の風を通す布がここから生まれます。
目次
- からみ織りとは
- 構造とバリエーション(紗・絽・羅 ほか)
- 織り方(手織り/力織機)
- 設計のコツ(糸・密度・透けの設計)
- 特徴と使い心地
- お手入れと長く楽しむために
- 学びを深める(原点・機械・作品)
- よくある質問
- 用語ミニノート
からみ織りとは
からみ織り(絡み織/捩り織、英:Leno weave)は、経糸どうしをねじって“からめ”、その小さな輪で緯糸を抱きとめる構造の織物です。 平・綾・朱子の三原組織とは異なる“第四の表現”として古くから愛され、透け感・通気性・目ずれの起きにくさを両立します。 経糸が交差して緯糸を抱える・・・からみ織りの基本構造。
構造とバリエーション(紗・絽・羅 ほか)
- 紗(しゃ):連続的にからみを作る基本形。全面に繊細な透け感。
- 絽(ろ):一定間隔でからみを入れ、透ける段と密な段を交互に構成。夏の和装でおなじみ。
- 羅(ら):複数本の経糸を複雑にからめ、網状の立体感をつくる高度技法。
- 部分からみ:平・綾などと併用し、模様部分だけ透けを設計。
まとめ:「からみの頻度・幅・本数」の設計で、透けのリズムや陰影をコントロールできます。
織り方(手織り/力織機)
手織り(足踏み式)でのからみ
- 捩り(ツイスト)動作:からめたい経糸群を左右に入れ替え、緯糸を通す。
- ドゥープ/からみ綜絖:補助綜絖や仕掛け糸で、特定の経糸を“抱えさせる”。
- 部分からみ:模様位置だけ手挿し(ピックごと)でからみを作る方法も。
力織機(TUDAKOMA・昭和初期)でのからみ
- 速度を抑えた運転:経糸のねじれと緯入れの同期を人の目と耳で確認。
- 道具の工夫:からみの筬の装置・経糸群の捌き・経糸の摩擦管理、打ち込み圧の微調整をすべて手動で確認。
- 糸替えの判断:節や真綿の太い撚りなど表情として活かすか、織りを止めて色や糸の種類を入れ替えるかを織りながら考える。
※ yamamayuのからみは、織りの原点に通じる“間合い”を大切にしています。
設計のコツ(糸・密度・透けの設計)
糸選び
- 経糸:ねじりに耐える均整な撚り・強度が安心(絹/綿/麻)。
- 緯糸:細番手で軽やか、太番手で陰影を強調。真綿手紡ぎや野蚕糸をアクセントに。
密度
- 密度を上げる:透けは控えめ、表面は上品に。
- 密度を下げる:透けを強調、風合いは軽く。
色と意匠
- 経糸で色の陰影を設計、緯糸で色の揺らぎを添える。
- 後染め(天然染料)で透明感のある濃淡を重ねることも。
特徴と使い心地
- 通気性・軽さ:からみ構造の“抜け”が、涼やかな着用感を生む。
- 目ずれしにくい:経糸が緯糸を抱えるため、組織が安定。
- 滑りにくい:ストールを肩にかけても滑りにくい。
- 陰影の表情:斜光で陰が立ち、布の奥行きが際立つ。
「風が通って、影が遊ぶ。」—— からみ織りの魅力です。
お手入れと長く楽しむために
- 基本は中性洗剤でやさしく押し洗い → しっかりすすぎ → 陰干し。
- 濡れたままの過度な引っぱりは避ける(からみ目の変形予防)。
- 天然染料の場合は直射日光を控え、影干しを。
学びを深める(原点・機械・作品)
- 織りの原点:1894年 八王子・二階堂織物から続く系譜
- 力織機:TUDAKOMA(昭和初期)と“間合い”の織り
- 手織り機(足踏み式):手と足のリズムで織る
- コレクション:からみ織りの作品を見る
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よくある質問
Q.“からみ”はすべて透けますか?
設計次第です。密度を上げたり、からみの間隔を調整することで、透け感を弱めることもできます。
Q.洗濯で目ずれしませんか?
からみ構造は緯糸を抱えるため安定ですが、濡れた状態で強く引っぱると変形の恐れがあります。押し洗いと陰干しがおすすめです。
Q.どんな季節に向いていますか?
からみ織りの技法は春夏の軽やかな装いに最適ですが、yamamayuでは正絹糸や絹手紡ぎ真綿糸をしようしているので、秋冬にも楽しめます。yamamayuのからみ織りシリーズはオールシーズンお使いいただけます。
用語ミニノート
からみ(絡み) 経糸どうしをねじり、緯糸を抱いて固定する動作/構造。
紗・絽・羅 からみ織りの代表的バリエーション。透けの度合いや構造が異なる。
ドゥープ(doup) からみを作るための補助綜絖や仕掛け糸の総称。