
自然から受け取り、手を動かし、また次へ。
yamamayuの布づくりは、繭から始まります。
蚕を育て、真綿をつくり、糸を紡ぎ、染め、織る。
その途中には、植物や水、土地、人の手、長く使われてきた道具があります。
布は、ひとつの素材だけから生まれるものではありません。
さまざまなものとの関わりの中で、少しずつ形になっていきます。
私たちが大切にしたいのは、自然から受け取ったものを一方的に使うのではなく、できるだけ最後まで生かすこと。道具を直しながら使うこと。土地で受け継がれてきた知恵に耳を傾けること。そして、できあがった布も、手を入れながら長く使っていただくことです。
循環とは、きれいな円を描くことではなく、
受け取ったものとの関係を、そこで終わらせないことなのだと思っています。
1|自然から受け取り、自然へ返す
桑の葉を食べて蚕が育ち、繭ができ、その繭から糸が生まれます。
植物から色をいただくこともあります。
布づくりの途中で出る染めかすや蚕の蛹など、自然へ戻せるものは堆肥にし、再び土へ返しています。
自然の素材を使うこと自体が、ただちに環境にやさしいとは考えていません。
何を、どこから、どれだけ受け取り、どのように使うのか。
そのことを考えながら、必要なものを必要なだけ受け取る。
自然を材料としてだけ見るのではなく、布づくりを支えている存在のひとつとして向き合っていきたいと考えています。
2|素材を、できるだけ使い切る
織りの仕事では、どうしても短い糸や余り糸、小さな布が生まれます。
yamamayuでは、それらもできるだけ捨てず、結んだり、つないだり、別の布や表現の中で生かしています。
均一ではないものや、短く残ったものにも、その素材がここまで辿ってきた時間があります。
すべてを同じ形に整えるのではなく、
その素材にまだできることがあるなら、もう一度手に取ってみる。
使い切ることは、素材との関係を最後まで続けること。
そう考えています。
3|道具を直しながら使う
工房には、長いあいだ使われてきた織機や整経機、糸づくりのための道具があります。
新しい機械に替えたほうが効率がよいこともあります。
それでも、手入れをし、壊れたところを直しながら、今も使い続けているものがあります。
古い道具には、使ってきた人の手の跡や、長い時間の中で身についた使い方が残っています。
それをただ保存するのではなく、実際に手を動かしながら使い続けることで、道具と一緒に技術や感覚も次へ渡していくことができます。
新しい使い方を探すこともあります。
けれど、受け継いできたものの中心を壊さないこと。
その上で、今の時代にできることを考えていきます。
4|土地の知恵と、手仕事を受け継ぐ
山梨の山あいに工房を構えてから、およそ25年。
この土地では、木を切って炭を焼くこと、猪を獲り、その命をいただくこと、枝豆を乾かして大豆にすることなど、自然と暮らしが近く結びついた営みを日常の中で見てきました。
けれど、高齢化とともに、そうした光景は少しずつ見られなくなっています。
山に人が入らなくなると、暮らしと自然のあいだにあった関係も変わっていきます。
かつては冬になると、畑の堆肥にするために山の落ち葉を集めていました。落ち葉が取り除かれた場所には春になると新しい芽が出て、それを野生動物が食べる。人が山に手を入れることもまた、自然の循環の一部でした。
野生動物と人がともに暮らしていくためにも、山をただ遠くから守るのではなく、適切に関わり続けることが必要なのではないかと考えています。
yamamayuにできることのひとつとして、かつて養蚕や天蚕の飼育に使われていた桑やクヌギの生育地をもう一度整え、蚕や天蚕を、この土地で受け継がれてきた大切な営みのひとつとして、もう一度育てていきたいと思っています。
繭を育て、工房で糸にし、染め、織る。
できるだけこの土地の中で、素材から布になるまでをつないでいくこと。
染めについても、藍を育てたり、この土地の環境に合うのであれば、かつて染料として大切にされながら失われつつある植物を、守りながら育てることを考えています。山や畑の手入れの中で出会う葛など、身近な植物を生かす方法も探していきます。
私たちだけで知っていることには限りがあります。
だからこそ、長くこの土地で暮らしてきた方々から知恵を学び、それをそのまま昔の形に戻すのではなく、今の暮らしや仕事の中で生かせる形へつないでいきたい。
土地の知恵を受け継ぐことは、昔へ戻ることではなく、土地との関わり方をもう一度つくり直すこと。
そう考えています。
5|手を入れながら、長く使う
布は、使う時間とともに変化していきます。
やわらかくなったり、身体になじんだり、最初とは少し違う表情になったり。
yamamayuの作品も、ほつれなどのご相談をいただいた際には、状態を確認し、可能な範囲でお直しをしています。
また、染色のワークショップでは、汚れが気になった衣類や、もう一度着てみたい衣類を、草木染めで染め直すこともあります。
新しいものに替えることだけが選択肢ではなく、
今あるものに、もう一度手を入れてみること。
そうすることで、そのものとの時間がもう少し続くことがあります。
布を「つくって終わり」にするのではなく、使う人の時間の中で育っていくものとして届けたいと考えています。
受け継ぐことは、変えないことではない
1894年から続いてきた染織の仕事も、ずっと同じ姿だったわけではありません。
暮らしが変わり、道具が変わり、つくるものも変わってきました。
それでも、素材に触れ、手を動かし、そこから何かを感じ取ろうとすることは続いています。
守ったほうがよいもの。
変えてよいもの。
一度立ち止まって考えたほうがよいもの。
その境界を見ながら、受け継いだものを今の時間の中で使っていく。
そして、そこから生まれたものをまた次へ渡していく。
自然と人、素材と道具、過去と現在。
それぞれが交わりながら、次の時間へ続いていく。
それが、yamamayuの考える CYCLES & CARE です。