真綿のものがたり

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真綿

山の気配が変わると、工房の空気も少しだけ変わります。
朝いちばんの澄んだ空気のなかで真綿に触れると、ふわりと心がほどけていきます。
真綿は、わたしたちの暮らしのリズムそのものです。

真綿は、繭を煮てやわらかくしたあと、蛹を取り出し、薄い層にひらいて重ねた絹です。
そこから少しずつ糸を引き、手で紡ぎ、布へとつないでいきます。

このページでは、真綿という素材の説明だけでなく、山の暮らしのなかで真綿に触れる時間や、そのやわらかさがどのように布へつながっていくのかを、静かに綴っています。


山と真綿

四季のうつろいに合わせて、手の動きも少しずつ変わります。
冬はゆっくり、春は軽やかに。真綿を広げ、指先で糸を引き出すたび、山の呼吸と自分の呼吸が重なるように感じます。


手の記憶

教わったのは「上手さ」ではなく、「手ざわりを信じること」でした。
きれいに揃えるより、少しの揺らぎを残すほうが、布には物語が宿ります。

太いところも、細いところも、その日その時の気分のままに。
糸は、こちらの都合に合わせるより、自然のリズムに寄り添うと、不思議とやさしい表情になります。

「机の上に真綿を置いておくと、忙しい日でもふっと落ち着きます。」


季節の色、暮らしの色

里山の風景

工房のそばでいただく植物の色は、毎回同じ色に染めようとしても、同じようには染まりません。
それでいい、とわたしたちは思っています。

雨の日の色、晴れの日の色、剪定した枝の色。
自然なままの色が、暮らしの景色に近いからです。


子どもたちへ

学校や森のようち園で、子どもたちと真綿に触れる時間があります。
糸になる瞬間、目の前がぱっと明るくなる。できあがりに正解はなくて、触れて、ためして、笑って。

そんな時間が、手しごとを未来へつないでいくのだと思います。


天蚕と友人たち

岩手で天蚕を育てる友人の繭、山梨の工房で育てた繭。
人の暮らしと自然のめぐりが重なって、糸は生まれます。

蛹は土へ、染めに使った植物も土へ。
いただいた命を、また自然へ返す循環の中で、わたしたちの布は育っています。


「何もしない」時間

ワークショップでは、ときどき「あえて何もしない」時間をつくります。
ただ座って、手元の真綿に触れる。外の音を聞く。それだけで十分な日もあるからです。

急がなくていい。決めなくていい。
真綿は、静かな時間がよく似合います。

命あるものから生まれる真綿は、やわらかく、あたたかく、心をやわらげる不思議な力を持っているように思います。


真綿の魅力

真綿の大きな魅力のひとつは、他の繊維にはない美しい光沢です。
光をよく吸収し、やわらかく反射することで、さまざまな角度から穏やかな輝きが生まれます。

そのため、真綿の糸や布には、静かな奥行きのある表情が宿ります。

手紡ぎ真綿糸のからみ織布
手紡ぎ真綿糸のからみ織布
真綿の光沢

山まゆの里染織工房では、暮らしから遠のいてしまった自然からの贈りものでもある真綿を、布やオブジェの創作、そしてワークショップを通して、次の世代にも伝えていきたいと考えています。


もっと知りたい方へ

このページは、yamamayuの真綿と暮らしの物語を綴っています。
素材や工程について、さらに詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。


この先へ

真綿の背景を知ったあとに、工房のこと、日々の記録、そこから生まれる布もあわせてご覧ください。

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