山のふもとで、家族の手で煮出した色を、布にそっと移す。
同じ植物でも、季節や天気、そして私たちの手つきで表情は変わります。
このページは「yamamayuの染め」の世界と、植物由来の染色の基礎知識をやさしくまとめた“学びの入り口”です。
目次
- yamamayuの染め:3つの約束
- 植物染料の基礎
- 色のめやす(植物と色)
- 定着(媒染)のしくみと運用
- 藍について(発酵建ての魅力)
- 経年変化とお手入れ
- 工房の実践:循環するものづくり
- 学びを深める(染め図鑑/ワークショップ)
- 用語ノート
- よくある質問
yamamayuの染め:3つの約束
- 自然とともに。 庭や里山の剪定木、畑で育てた藍やマリーゴールドなど、身近な恵みを活かします。動物の食べ物になる植物は採りすぎず、季節の巡りに合わせます。
- やさしく、丈夫に。 基本はアルミ系媒染で繊維を傷めずに定着を助け、必要に応じて少量の鉄で渋みを添えます。やさしさと実用のバランスを重んじます。
- 循環をつくる。 染め終わりの植物は堆肥に、残液は中和・希釈など適切に処理。色をいただいた土地へ、やさしくお返しします。
※ 本ページでは「植物染料/天然染料」という表現を用います。一般的な言い方として広く使われる語はありますが、誤解を避けるため本サイトでは上記に統一しています。
植物染料の基礎
植物の葉・花・樹皮・実・根などにふくまれる色素を煮出し、糸や布に移す染色法の総称です。色素はそのままだと繊維に留まりにくいことがあるため、 媒染(mordant)で繊維と色素の結びつきを助けます。繊維の種類(シルク/ウール/綿/麻)や、色素の性質によって運用が少しずつ異なります。
まとめ:「煮出す → 媒染でつなぐ → 色を重ねる」。素材・季節・手つきで色は揺らぎ、唯一の表情になります。
色のめやす(植物と色)
- 黄色〜黄緑: マリーゴールド、セイタカアワダチソウ、刈安、玉ねぎの皮 など
- 茶〜こげ茶: クヌギやナラの樹皮、どんぐり など
- ピンク〜赤: 茜、(参考:昆虫色素のコチニール)
- 灰味・渋色: 鉄媒染で黄色→オリーブ、ピンク→深紫み など(タンニンと好相性)
- 青: 藍(発酵建てや還元建てによるバット染め)
工房の色見本。季節と媒染の違いが、そのまま表情になります。
まとめ:植物×季節×媒染の組合せで、やわらかいパステルから深い渋色まで幅広く表現できます。
定着(媒染)のしくみと運用
媒染は、色の鮮明さや色落ちにくさ(堅ろう度)に直結します。yamamayuでは、繊維への負担を抑えつつ再現性を高めるために、次の基本で染色をしています。
基本的な染色のめやす
- シルク・ウール:アルミ系(alum)を基本に、色調整としてごく少量の鉄を併用。
- 綿・麻:タンニン下処理 → アルミ系媒染(必要に応じて炭酸カルシウム/石灰で調整)→ 染色。
- 鉄媒染の注意:渋みと堅ろう度の向上に役立つ一方、濃度と時間が過ぎると繊維が硬化しやすいので、低濃度・短時間を守ります。
工房での媒染
- 基本は 鉄・アルミ・石灰 を中心に使用し、出したい色によって必要に応じて他の媒染も選択します。
- 石灰媒染は、重金属媒染に比べ環境負荷が少なく、自然循環の中で扱える素材として取り入れています。ただしアルカリ性が強いため、pHを整えて使用・排水しています。
ワークショップでの工夫
- 参加者には安全で扱いやすい ミョウバン(アルミ媒染) を基本にし、さらに 鉄媒染を少量加えて「色の違いを楽しむ」体験をしていただきます。
- 染色の奥深さを感じつつも、地球にも人にもやさしい媒染を優先しています。
TIP|やさしいレシピ設計
「ベースはアルミ/雰囲気づけに鉄」という二段構えにすると、色の再現性と繊維のやわらかさを両立しやすくなります。
まとめ:アルミ系でしっかり“つなぎ”、鉄は香辛料のように少量で表情づけ。yamamayuではさらに石灰を加え、布や用途に応じて調整しています。
藍について(発酵建ての魅力)
藍は水に溶けた色をそのまま繊維に移すのではなく、青成分を還元して可溶化し、染めた後に空気で酸化させて定着させる「藍染の還元染め」の仕組みです。 発酵建ては微生物の力を借り、重層的な青を重ねられるのが魅力。赤み・緑みを帯びる副次成分の響きも、深みのある表情につながります。
まとめ: 還元と酸化の往復で、藍は“生きた青”を育てます。
経年変化とお手入れ
植物由来の色は、光や洗濯で少しずつ表情を変えます。退色=劣化ではなく、使い手とともに育つ景色として味わっていただけたらうれしいです。 長く楽しむために、次のポイントをおすすめしています。
- 直射日光を避け、陰干し・日陰保管が基本。
- 中性洗剤でやさしく押し洗いし、よくすすいで陰干し。
- 鉄媒染の渋色は、強アルカリや長時間の浸漬を避ける(硬化予防)。
まとめ: ケア次第で色はやわらかく育ち、暮らしに馴染んでいきます。
工房の実践:循環するものづくり
- 素材: 里山の剪定木や季節の草、畑で育てた藍・マリーゴールドなど。必要な分だけをいただきます。
- 媒染: 基本はアルミ系、渋み付けに少量の鉄。繊維へのやさしさを最優先。
- 創作: 作品や用途に応じ、植物由来と化学染料を使い分けます(例:高い耐光・耐洗濯が求められる用途は化学染料、やわらかな色相は植物由来)。
- 循環: 残渣は堆肥に、残液は中和・希釈など適切処理。地域の生態系に配慮します。
使い手の暮らしに寄り添う「やさしさと丈夫さ」のバランス。——それが yamamayu の染めです。
学びを深める(染め図鑑/ワークショップ)
染め図鑑(準備中)
季節の植物×媒染×素材の色データを、見本写真とともに整理します。
読む・見る(過去のブログ/動画)
- 花びら染め(カーネーション)
- 花びら染め(続編)
- 花びら染め(ツルニチニチソウ/桜の絵葉書)
- 花びら染め(デコ)
- 季節の染めメモ
- 花の水彩のような染め
- 季節の染め(記録)
- 【Vlog】染め・繭真綿ストール(ヨモギ)
- ヤマモモ(Bayberry)での染色
- ネズミモチ(Glossy Privet)での染色
- 地域の植物で染色(サザンカ ほか)
- しぼりの表現
- 体験ワークショップ(2023年6月)
- Natural dyeing class
- 染織教室 in 山梨(2023年7月)
ワークショップ
里山の香りに包まれて、色を煮出す一日。初心者の方も歓迎です。日程を見る →
用語ノート
植物染料/天然染料
植物など自然由来の色素を用いる染色。yamamayuの本ページではこの表記に統一。
媒染(mordant) 繊維と色素の結びつきを助ける工程。アルミ系や鉄などを目的に応じて使用。
タンニン 植物にふくまれる渋味成分。綿・麻の下処理で足場を作り、定着を助ける。
発酵建て 藍染の建て方の一つ。微生物の働きを活かし、還元状態を維持して染める。
FAQ
Q.植物の染めは、合成染料より必ず安全ですか?
A.体質や肌の状態によっては、植物でも合わない場合があります。媒染に金属塩を用いる場合は取り扱いに注意し、皮膚が敏感な方はパッチテストをおすすめします。yamamayuではアルミ系を基本とし、鉄は低濃度・短時間で運用しています。
Q.はじめての媒染は何を使えば良いですか?
A.シルク/ウールは扱いやすいalum(アルミ系)から。綿・麻はタンニン下処理 → アルミ系の順が安定です。色の表情づけに少量の鉄を。アルミ系は、身近にあるミョウバンが手軽に使えます。
Q.退色が心配です。長く楽しむコツは?
A.直射日光を避け、陰干し・日陰保管。洗濯は中性洗剤でやさしく押し洗いし、よくすすいで陰干し。強アルカリや長時間浸漬は避けると安心です。退色をしたら、再度染め直すこともできます。


