整経(せいけい)|yamamayuの整経

糸が線から面へと変わる入口・・・それが整経。
yamamayuでは、長物・広幅に対応する「改良・動力整経機」と、足踏み織機や卓上織機のための「木製整経枠」を使い分け、用途にあわせて最適な経糸を整えています。

目次


整経の概要

整経は、織物に先立って経糸の本数・長さ・張力・配列を計画どおりにそろえる工程です。ここでの精度が生地の品位や生産性に直結します。広幅・長物では「動力整経機」を使用、狭幅・短尺では木製整経枠での手整経を扱いやすいので使用しています。


工房の2つの整経機

1)改良・動力整経機(昭和初期機の改良)

  • 用途:長さ・幅の広い整経(長物、複数色の配列、大本数に対応)
  • 特長:安定した巻取り/メーター管理/張力の均しがしやすい
  • 活用例:ストールの制作、手織りの広幅の布地 など

2)木製整経枠

  • 用途:長さ・幅の狭い整経(足踏み織機の試作や少量の創作)
  • 特長:設計や配色の試しが容易/準備・片付けが簡便
  • 活用例:パターン試験、色替えの多いサンプル、ワークショップの時 など

基本の流れ(共通)

  1. 設計決定:仕上り寸法・織縮み見込み・筬密度・かけ幅・本数・配色案 をまとめる
  2. 糸準備:それぞれのボビンに同じ量を巻く・整経機の確認
  3. 整経:木枠=周回経路を一定に/動力整経機=糸を整経機に均等に設置 どちらも綾をとりながら経糸をつくっていく
  4. 巻き取り:木枠はで保護し運搬、動力側はお巻きへ均一に巻取る
  5. 織機へ:綜絖通し → 筬通し → 巻き取り → 試し織り

設計と計算(長さ・本数・密度)

A. 整経長(1本あたりの必要長)

整経長 = 仕上り長 + 織りはじめ分+ 織り残り分+ 織り縮み分
取り代/縮みは糸・織機の組織・張力で変動します。

B. 通し幅と総経糸本数

通し幅
筬に通す幅(通し幅)=仕上がり幅+織り縮み分(5%)

整経総本数
基本式の例:本数 = (筬の密度[本/cm 相当]) × 通し幅[cm] ×(1目に入れる本数)
例:40羽(=4本/cm換算)の筬で、通し幅50cm、1目2本通し → 4×50×2=400本。丸羽(1目2本)や空羽(1目飛ばし)を採用する場合は、その設計を反映して本数を調整します。配色の縞ごとの本数は偶数に揃えると作業が安定します。

C. 経糸の必要量

経糸の必要量=整経長×経糸総本数
緯糸は、糸の太さや織りの技法によって違いますが、平織りの場合、経糸の約80%が必要。


※かせ糸は番手表示になっているので、その番手のグラム=メートルを調べる。


木製整経枠のやり方

  • 経路設計:最初に整経長をテープ糸等で取り、固定し周回数を決める。
  • 綾の確保:糸順を保持するためを必ず作る。
  • 張力:常に軽く一定に。引き過ぎ・緩み過ぎは後工程でムラの原因。
  • 巻き取り:外し→鎖状にまとめて紐で結わき絡みを防止し、平らな場所に置き、お巻きに巻いていく。

まとめ:織機での配色試験やミニマムな創作では木枠が便利で簡単です。


長物・広幅向き:改良・動力整経機のやり方

  1. 準備:糸立て→テンション装置→メーター確認
  2. 糸をセット:幅・密度・本数を決めて均等に糸をセット
  3. 綾取り:その都度、綾を取りながら糸を巻いていく
  4. 巻き取り:整経が終わったら、お巻きに巻き取る

まとめ:つねに糸にたるみができないように、テンションを保つことが大切。経糸の整経の良し悪しがその後の織りに作用するので、ミスが許されないとても重要な作業。


張力・取り扱いと安全

  • 張力は常に一定・過不足なく(区画間や周回ごとの差が後のムラ・よれに直結)。
  • 金具・ピン・回転部への巻き込み・引っ掛かりに注意。糸の切れたかの確認も手先と目の感覚でおこなう。区画間の糸の重なりも適切な幅を保つことが重要。
  • 古い整経機などで、常にメンテナンスやアップデートが欠かせない。

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