真綿から糸を紡ぐ方法(手紡ぎの基本)

目的:真綿をふんわりと広げ、指で少しずつ引き出して糸に紡ぐ工程です。
繊維が長い絹ならではの特徴を活かし、撚りをかけながら糸をつなげていきます。
工房では「手紡ぎ真綿糸」として、布づくりの核になる大切な作業です。

目次

  1. 真綿の準備
  2. 糸の紡ぎ方(手順)
  3. 使う道具
  4. 科学のメモ(長繊維の特性)
  5. 上手に紡ぐコツ
  6. 関連リンク
  7. よくある質問(FAQ)

真綿の準備

繭を煮て乾燥させた後、層をふわっと広げて綿状の真綿にします。
真綿を指のはらでやさしく引き延ばすと、ふわふわになり糸にしやすくなります。

綿のような絹の真綿

糸の紡ぎ方(手順)

手編

1. 真綿を引き出す

真綿をふわふわにして、ひっくり返し、中心から指先で少しずつ繊維を均一に引き出す。力を強めれば太く、弱めれば細くなります。

2. 撚りをかける

片手で糸端を持ち、もう一方の手で軽くひねりながら引き延ばすと、繊維同士が絡み強度が出る
撚りの強さで風合い(柔らか/張り)が変わります。

3. 糸を巻き取る

ある程度の長さになったら、糸巻き棒や管に巻き取ります。
均一なテンションで巻くと後の織りが安定します。

糸紡ぎ棒編

真綿をふんわり広げた状態。ここから糸になる
糸紡ぎ棒に真綿をひっかける
棒を回転させて撚りをかける
撚れた糸は棒に巻き付ける
真綿をのばし、撚りをかけるを繰り返す

使う道具

  • 糸巻き棒(管):木の棒や紙管を利用
  • 撚りかけ補助具:スピンドル・糸車

科学のメモ

真綿から糸を紡ぐとき、心地よさや扱いやすさの背景には、絹そのものの科学的な性質があります。

長繊維の特性

絹糸のフィブロインは非常に長い繊維(フィラメント)です。
コットン(短繊維)と違い、真綿は繊維が途切れにくく、そのまま引き伸ばすだけで糸になるのが特長。
撚りを加えることで摩擦力が増し、強度が安定します。

  • 真綿:数十cm〜数mの繊維が重なっている
  • 綿(コットン):2〜4 cm程度の短繊維

ポイント:長繊維ゆえに「撚りを弱くす

フィブロインの構造

繭糸の主成分であるフィブロインというタンパク質は、無数の微細な穴をもった構造をしています。
この穴が水分を吸収・保持し、必要に応じて放出するため、吸湿性と放湿性に優れています。
梅雨時や夏でも蒸れにくく、さらりと快適な素材である理由です。

空気を含む繊維構造

真綿は長い繊維が蜘蛛の巣のように絡み合ってできています。
その隙間にたっぷりと空気を含むため、軽くて、ふんわり、保温性が高いのが特徴です。
糸にしたときに均一でなくても、かえって温かみや柔らかさが増す理由です。

体にやさしい性質

  • 静電気が起きにくい → 冬でも快適
  • 臭気を吸収しやすい → 清潔を保ちやすい
  • 紫外線をカット → 肌にやさしい
  • アミノ酸を含む → 肌触りが良く、敏感肌の方にも安心

学びのポイント

糸を紡ぐときに感じる「ふんわり」「するり」という感触は、科学的にも裏づけがあります。
真綿は自然がつくった機能素材であり、その魅力を次世代へ伝えていくことが、私たちの活動の大きな意味でもあります。

上手に紡ぐコツ

  • 少しずつ、均等に引き出す:欲張って一度に引くと切れやすい
  • 湿度を保つ:乾燥は切れの原因。冬は加湿器や手水を。真綿には蛹の油分があるので、糸を紡いでいる間に放湿効果あり。
  • リズムをつくる:撚り→引き出し→巻き取りのサイクルを安定させると早く均一の糸になりやすい
  • あそぶ:太さや細さを楽しんで均一ではない自分なりの糸をつくる。経糸は、そうこうや筬に糸を通さなければならない場合はなるべく細いものでという条件があるけれど、緯糸の場合は織機に合わせた糸にという必要がないので、遊んだ糸が使える。

よくある質問(FAQ)

Q. 太さを揃えるコツは?
A. 引き出す力を一定に保つこと。撚りを加える前に軽く指で均すと安定します。

Q. 糸が切れたらどうする?
A. 切れ端を少し重ねて撚り合わせれば自然につながります。合わせた部分は撚りを強くかけてとれないようにします。

Q. 道具は必要?
A. 基本は指先だけで可能。慣れると糸車やスピンドルで効率的にできます。

Q. どんな布に向く?
A. 手紡ぎ真綿糸はふんわり柔らかい布に。ストール・着物地・小物まで幅広く使えます。