蚕は卵→幼虫→蛹→成虫と姿を変え、約50〜60日で一生をめぐります(気温・品種で前後)。
その短い命のクライマックスが「繭づくり」。ここから絹の糸や真綿が生まれます。
目次
ライフサイクル

卵➔孵化(蟻蚕)
卵からかえったばかりの幼虫は3mmほどで黒く、全身に細かな毛があり、蟻に似ることから 蟻蚕(ぎさん)と呼ばれます。ここから桑の葉を食べて育ち、4回の脱皮を経て大きくなります。
幼虫(1〜5齢)
5齢(さいごの幼虫期)は食欲が最も旺盛で、幼虫期に食べる桑葉の大半(およそ80〜90%)をこの時期に消費します。 体は透けるように黄みを帯び、やがて熟蚕(じゅくさん)となって繭づくりの準備に入ります。この時期の蚕を熟蚕(じゅくさん)と呼びます。
熟蚕➔上蔟(じょうぞく)➔繭
「蔟(まぶし)」などの足場にのぼり、口の糸口から液状の絹を吐き出して2〜3日かけて繭を完成させます。 その後、繭の中で蛹になり、約10日前後で成虫(蛾)へ。
蔟(まぶし):蚕が繭を作るために使う枠や道具。ここに糸をかけて2〜3日で繭を完成させます。
成虫(蛾)
成虫は交尾・産卵のために羽化し、基本的に餌をとらずに次世代へ命をつなぎます。
まとめ:蚕はわずか約2か月で卵から成虫まで成長し、繭を残して次世代につなぎます。
絹糸腺(けんしせん)の成長
幼虫の体内にある一対の絹糸腺は、5齢の間に急速に発達します。5齢の初めでは体重に占める割合が小さくても、 熟蚕の頃にはおよそ40%前後に達します。体の大部分が「糸のもと」で満ちていく・・・それが繭づくり前夜の蚕です。
まとめ:絹糸腺は幼虫の成長とともに急速に発達し、繭づくりの原動力になります。
繭から生まれる糸の種類
- 生糸(きいと):良質な単繭から繰り出す長いフィラメント。絹織物の主原料。
- 玉糸(たまいと):二頭以上の蚕が二重繭(ダブルコクーン)を作った場合に繰り出す糸。節(ネップ)と個性的な表情。
- 絹紡糸(けんぼうし):くず繭や切れ繊維を集めて紡いだ短繊維の糸。均整で扱いやすい。
- 真綿 → 紬糸:繭を煮て綿状(真綿)にし、手で紡いだ糸。ふくらみと温かみが魅力。
まとめ:繭はすべて無駄なく使われ、それぞれ異なる表情をもつ糸になります。
飼育記録(yamamayuの実践)
- 卵の管理と孵化のようす
- 1齢(蟻蚕) → 2齢 → 3齢 → 4齢 → 5齢
- 上蔟〜繭づくり / 小石丸(在来品種)の営繭
- 小石丸の糸繰りワークショップの記録
→ 野蚕(天蚕ほか)の図鑑もご覧ください:野蚕図鑑
よくある質問
Q. 蚕の一生はどのくらい?
A. 飼育条件にもよりますが、ふつう約50〜60日です(卵期・幼虫期・蛹期・成虫期を含む)。
Q. 5齢の蚕は本当にたくさん食べますか?
A. はい。幼虫期に食べる桑葉のうち約80〜90%を4〜5齢、とくに5齢で消費するとされています。
Q. 玉糸(たまいと)って何ですか?
A. 二頭以上の蚕が一つの繭を作った「二重繭」から取れる糸です。節の表情が魅力で「デュピオンシルク」とも呼ばれます。
Q. 成虫(蛾)は何か食べますか?
A. 基本的に食べません。交尾と産卵のために羽化し、短い期間で次世代へ命をつなぎます。
Q. 品種による違いはありますか?
A. はい。在来種の小石丸は繭が小さくて瓢箪型をしていて糸が細いなど、品種ごとに特徴があります。
