
天蚕とは
山に育ち、静かな光を宿す、もうひとつの絹。
天蚕(ヤママユ)は、日本の山間部の落葉樹林に生息する、日本在来の野生の蚕です。
黄緑の繭と、内側からほのかに光るような独特の絹を生みます。
家蚕が人のそばで育つ蚕だとすれば、天蚕は山の気配をまとって育つ蚕です。
食べる葉も、育つ場所も、繭や糸の表情も、家蚕とは異なります。
山で育つ蚕
天蚕は、クヌギ、ナラ、カシワ、カシなどの葉を食べながら育ちます。
人の管理のもとで安定して育つ家蚕とは異なり、自然に近い環境の中で一年に一度の営みを繰り返します。
そのため、天蚕の繭や糸には、山の光、風、季節の移ろいがそのままにじむような表情があります。
山梨の工房での飼育
山梨県市川三郷町の自然に囲まれた環境で、天蚕の飼育が行われています。
クヌギの木を植え、その枝に卵をつけて育てます。
この地域ではかつて各所で天蚕飼育が行われていたため、今もクヌギがまとまって植えられた場所を見かけます。
そうした土地の記憶もまた、天蚕の営みを支えています。
工房での天蚕飼育のようすは、創作日記にも記録しています。
山に育つ絹の一年を読む
いのちのめぐり
晩夏に産みつけられた卵は冬を越し、四月下旬ごろに孵化します。
幼虫は約55日ほどかけて育ち、四回脱皮しながら五齢まで進みます。
やがて葉のあいだに約二日かけて繭をつくり、蛹になります。
繭糸長はおよそ600〜700メートル。成虫は八月上旬から十月下旬に羽化し、交尾・産卵を経て次の命へとつながっていきます。





天蚕糸の表情
天蚕糸は、独特の光沢があり、軽く、やわらかく、糸の中に空気を含むため保温性もあります。
同時に丈夫さも備え、他の繊維には見られない静かな存在感を持っています。
家蚕は長く糸にしやすいよう改良されてきましたが、野蚕の繭は糸にすること自体が難しいものです。
その難しさもまた、天蚕糸の希少性と魅力につながっています。
yamamayuでの素材づかい
yamamayuでは、天蚕の正絹糸だけでなく、糸に引けない部分を工房で紡ぎ糸にしながら、作品へと生かしています。
長く引ける部分も、引けない部分も、それぞれ別の表情として布へつながっていきます。
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素材の背景を知ったあとに、工房のこと、創作のこと、そして作品へと、ゆっくり進んでいただけたらと思います。
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