森の中で生まれる光
天蚕は、クヌギの葉を食べ、山の風や太陽の光を受けながら育ちます。
その繭が持つ緑は、人工的につくられたものではなく、自然の条件の中で立ち上がる色です。
朝の光、午後の光、曇りの日のやわらかな明るさ。見る時間によって繭の色が少しずつ違って見えるたび、自然の中で育ったものだけが持つ深さがあるのだと思わされます。
繭の色を、そのまま布へ
天蚕の布では、繭そのものの色を活かしたいと思っています。
とくに緯糸にあらわれるその色は、染めた色にはない、静かなやわらかさを持っています。
光沢は強く主張するものではなく、近くで見るとやさしく、離れて見ると面として立ち上がるような光です。
それは、森の中で見つけた繭の印象に、どこか似ています。
自然の力をまとうということ
太陽の光を浴びて育った天蚕の布には、どこか自然の力が残っているように感じます。
一般に絹のたんぱく質は紫外線を吸収しやすい性質をもち、衣服そのものも肌と光のあいだに一枚の境界をつくります。
ただ、その守る力は布の厚みや織りの密度、仕上げによって変わります。
だから私たちは、天蚕の布を「強い機能をうたう布」としてではなく、光をやわらげ、肌のそばで自然の気配を受けとめる布として捉えています。
身にまとうとき、布はただ覆うだけではなく、外の世界と身体のあいだに、やわらかな距離をつくってくれます。
そのこと自体が、天蚕の布が持つ静かな力なのだと思います。
山梨と岩手、ふたつの山から
数年前から、山梨だけでなく岩手でも天蚕を育てるようになりました。
同じ天蚕でも、土地が変わると、そこに流れる時間や気配も少しずつ違います。
山梨の光、岩手の風。ふたつの山で育つ天蚕から受け取るものは、それぞれに異なります。
そうした違いが、これからの布の表情にも少しずつあらわれていくのだと思います。
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